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ることなど、まず相手の事を良く知ることに努めることが大切です。
次に自船の能力を知ることです。
例えば自船の停止、反転、回転の際に発生する惰力はどのくらいか、また旋回圏や停止距離は、そして舵や推進器の性能、機関の特性は、など、これらを十分知っておくことが必要でしょう。
こうして敵を知り、己を知った上で出入港作業にあたれば、少しは気持ちの和まる安心感を持つことができるでしよう。
また、しっかりとした判断力や決断力、冷静な心理状態、永年培ってきた鋭い勘といった、操船指揮をとる船長個々に求められるメンタルな面の数々も大切です。
「五感を磨けば六勘も働く」とか、「操船は理論より勘と慣れ」と言うように勘の大切さを言われてきていますが、そのためには船長の健康状態も見逃せません。
船長の健康状態の善し悪しは船内にもさまざまな影響を及ぼします。
体の病気は心の病気につながり、それは自分自身だけでなく他の乗組員にも不快感を与えることになり、それが災害発生の原因となって行くのです。
それでは出入港作業に起きる災害には、どのようなことが原因として考えられるかあげてみましょう。
まず主機関や舵、推進審のトラブルが考えられます。
次に、狭水道航行時や視界不良時、停泊船や航行船などの障害物の多いところでの速力の出し過ぎや、操舵に影響を及ぼすほどの速力の落とし過ぎ。
さらに、見通しのきかない所や視界不良時での見張りの不注意や船位確認の怠り。
変針時や変速時、追い越しの際の判断ミス。
水路や港内状況の調査不足、船長への助言の不足といった情報不足。
風や潮流などの外力の影響など、さまざまな原因が考えられます。
操船は緊張を伴うものだけに、ほんの少しのことでも心理がかき乱され平静さを失うときがあります。
そこで私はそのようなときの対策として、十分間のイメージトレーニングをお勧めします。
船橋へ昇る前の約十分間を瞑想にふけりながら、これから出入港する際の水路や航路内でのあらゆる出来事を想定し、試行錯誤の繰り返しをするのです。
こうしておけば不意に飛び出してくる漁船やプレ

 

 

 

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